記事提供元:神戸新聞NEXT
2度の延期を経て、消費税が1日、8%から10%に上がった。5年半ぶりの増税だ。景気への影響を懸念する声もある。今年、誕生400年を迎えた明石の台所・魚の棚商店街(兵庫県明石市本町1)は増税初日をどう迎えたのか。(長沢伸一)
JR・山電明石駅のすぐ南。全長350メートルに魚屋、八百屋、飲食店など約100店舗が並ぶ。
午前8時すぎ、開店準備が進む魚の棚を訪れた。
店頭で魚を並べる準備をしていた「藤永鮮魚店」店主、藤永武夫さん(78)に対策を聞いた。
「うちは値段そのまま。食料品は8%のままやから。キャッシュレスも導入せえへん」
生活必需品の食料品は今回、「軽減税率」が初めて導入され、税率は据え置きだ(酒類と外食は除く)。
ウナギ屋「黒谷商店」の黒谷浩史さん(38)は不安を口にした。
「それを知らず、全部値上がりすると誤解している人が多いのでは」
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「3カ月もしたら慣れるで」と話す買い物中の女性もいた。お客さんの大半は現金払いだ。
だが、何度も往復するうち、商品の隙間に「QRコード」を見つけた。スマートフォン決済の「ペイペイ」だ。政府は今回、中小の店舗でキャッシュレス決済した場合にポイント還元する制度を始めた。
設置した干物専門店「座古海産」の座古美穂子さん(47)が現状を教えてくれた。「2カ月ほど前に導入し、実際に利用したのは数人。でも、これから現金を持たない時代が来ると言われている。私も使ってみたら便利だった。どこまで普及するのか見極めたい」
海産物店のベテラン男性店主が、諭すような口調で訴えかけてきた。
「食料品は軽減税率で8%のままだけど、例えば運賃や、商品を入れる箱代は10%になる。この2%の差額はどうしたらええと思う?」
「お客さんは値上げはないと思っている。でも経費は上がる。実際は値上げしないと赤字になる」
商売の厳しさに触れた気がした。
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昼過ぎ、空腹を刺激する香りが漂う。名物の明石焼だ。そういえば持ち帰りは8%、店内の食事は10%の消費税になる。どう対応しているのだろう。
「うちは持ち帰りも内食も価格は一緒。アナゴ以外は値上げしない。2年前の開店の時からこの値段だったから」と「たこ磯別館」の鈴木京子さん(72)。
ただ、後で計算しやすいように会計に使う紙を店内と持ち帰り用で色分けし、対応しているという。
魚の棚には食料品以外の店もある。
「昨日まで1週間ぐらいは忙しかったけど、今日はね…」と包装販売店の店主、梅木孝子さん(60)。消毒に使うアルコール製剤だけは8%だが、残りの商品は10%になった。
複雑そう…。対応について聞くと、「この子が賢いから」とレジを指さした。
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夕方。1日の様子を魚の棚西商店街振興組合理事長の瀧野幹也さん(53)が教えてくれた。
「普段通り。特に変わったことはなかった。みんな手探りの感じかな」